よくある質問に内定取消がある。この時期になると会社の業績を理由に内定取消を言われる学生もいるようだが、これは法律的に見てどうなのかを触れておきたいと思う。
結論を先に言うと、正当な理由のない内定取消は「違法」なんです。泣き寝入りする必要はありません。内定=就職決定であり、内定取消=解雇に等しいというのが一般的です。
内定取消しをめぐって最高裁で争われた裁判の判決は次のようなものでした。
「求人募集に対する応募は労働契約の申込みであり、採用内定通知は申込みに対する承諾である。求職者が出した誓約書とあいまって、求人企業と求職者の間には、就労の始期を定めかつ誓約書に記載された採用内定取消し事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのが相当である。」つまり、会社側が入社誓約書を受領した時点で、労働契約が成立するという考え方を示したのです。同時に、内定者の地位についても次のような趣旨の判断を下しました。「就労の有無という違いはあるが、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的には異なるところはない。」
内定者といっても、ほとんど社員と同等の地位があるのであり、内定を取り消すことは解雇に等しい行為ということができます。極度の経営状況の悪化、急激な経済状況の変化等といった正当な理由もなく、採用内定を取り消したり、本採用を拒否した場合には、採用内定者から損害賠償を請求されても仕方がないでしょう。また、新規学卒者を雇い入れようとする者は、内定を取り消し、撤回あるいは内定期間を延長しようとするときは、あらかじめ公共職業安定所等に届けなければなりません(職業安定法施行規則第35条第2項)。
いずれにせよ、内定取消しについては、その事案ごとの状況(内定通知の内容、形式、内定期間中の取扱い、辞令の交付、保証人、誓約書の扱い等)、慣行などの解釈によって判断すべきものと考えられます。
じゃあ、人事担当者はこうしたことを理解していないのか。全くもって理解しています。知っていて言って来るのです。泣き寝入りせずに公的機関に相談をしてみましょう。